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水蜜桃の刻
第3章 その唇
「……時間かけてゆっくり、なんて無理だけど」
「いい」
ぎゅっ、と先生に縋る腕に力を込める。
「……したことあるの?」
こくん、と頷いて答えると、先生は表情を変えずに、まあ……だろうね、と呟く。
「俺、ゴム持ってないけど」
続けられた言葉に、私はチェストを指差した。
いつもここでしかしなかったから避妊具はここに置いていた。
まだ残ってるはずだった。
「どこ」
私の説明に、先生は身体を離して立ち上がり、そこを探ってその箱を取り出す。
「……まだ子供だと思ってたけど、違ってたってことか」
ぼそっと呟いたその言葉に、またどきりとした。
そしてその動悸は激しくなる一方で。
「いつもここで?」
躊躇いがちに頷くと
「……真面目な子だと思ってたのにな」
ふ……、と。
口元の片側だけを歪めるようにするその笑い方────。
どうしよう。
見たことのないその表情に、たまらなくなる。
好き。
やっぱり私、先生が好き。
きゅうっ、と。
締めつけられるように胸が苦しくなった。