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呪いのしるしを、君の体に。
第3章 3
「私、何かおかしいこと言いました?」
ことりが慌てると、高槻は目に涙を浮かべながら
「僕は芸能人じゃないよ」と言った。
「君は面白いな、水島ことりくん。
正直かと思ったら、思ったことを言わないし、自信があるように見えて、実はそうでもない。
独特の世界観の中に生きているね。
その鉄壁な顔の下に、いくつ違った君を持っているんだい?」
ことりはハッとして高槻を見たのだけれども
いつのまにか距離を詰めてきていた彼は
ことりの隣に立って、顔を覗き込むようにしてきた。
「何も、ないです…。
私は、ただの女子大生です」
「そうかな?」
こっちにおいで、と言われて、ことりはカップを持ったままついていく。
長いソファがあって、そこに高槻は腰を下ろした。
ことりに、隣に座るように促す。
「僕は、こっちのソファの方が好きなんだ。
それで、そういえば、僕に会う目的ってなんだったの?」
言われてことりは、すっかりと彼のペースに飲まれていたことに気づいた。
「あ、あの、お金返そうと思って!」
カバンから封筒に入ったお金を、高槻に突きつけた。
またもや彼はきょとんとした顔をする。
「借りたので、返します。
そのために来ました。
だけど、パフェの分はいただきました。
本当に美味しかったです、ごちそうさまでした」
そこまで一気に言って、ことりは頭を下げた。
頭を下げて、高槻の反応がない。
しばらく待ってみたのだが、相変わらず反応がない。
「高槻先生?」
ことりが恐る恐る顔をあげると
びっくりしたままの顔で、高槻が止まっていた。