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呪いのしるしを、君の体に。
第3章 3

「あの、先生…?」
「え、まさか君、それだけのために?」
「ええ、ハイそうですけど…何か…おかしいですか?」


高槻は一歩ことりに近寄ると、ことりの手首を掴んだ。


「え?」


スラリとしていて線が細いので分からなかったのだが
両手首をたった1つの手で掴み上げてしまう高槻は、立派な男性だった。


「本気で言ってる?」


覗き込まれ、グイグイと迫ってくる。


「いや、ちょっと待って。本気ですよ、本気。
じゃなきゃ、こんなところまで来ませんって。
だいいち、8千円近くのお釣りを返して何がおかしいんですか。
見ず知らずの人に助けてもらった挙句、お金までもらって。
これでお釣り返さなかったら、なんだか不甲斐ないし、恩を仇で返すような真似したくないんです!」


半ば押し倒しかかっていた高槻は
そこでピタリと止まった。


ことりはいろいろな意味で心臓に負荷がかかって
今にも頭が爆発しそうだった。


「ほんとのほんとに、それだけ?」


そこまで念を押されると、ことりはうっと言葉を詰まらせる。


「ほんとです。でも、ちょっとだけ、もう一度あなたを見たかった気持ちもあります。
芸能人なんてそうそうお目にかかれないし、幻だったんじゃないかって思って…」
「幻じゃない。ほら」


そう言うと、高槻はことりの手を拘束して頭の上で
ソファの淵に押し付けて動けなくした。


「分かりました、分かりましたから、どいてください!」
「うーん、どうしよっかな」
「ほんとに、何もないんです。
見たかった気持ちはありましたが、駅でお金渡して帰るつもりだったんです!」


あまりにも必死なことりに、高槻はさらに彼女の顔を覗き込んだ。
すでに態勢は崩され、ことりは身動きが取れない。
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