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呪いのしるしを、君の体に。
第6章 6
「君がそんなにお酒に弱いとは思わなかったよ」
高槻は恥ずかしがって一歩下がることりに
また一歩詰め寄る。
「勘違いされるだろう?
君は見た目も美人だし、お酒なんかに酔わなそうって」
図星だった。
実際、ことりはお酒が苦手だ。
「いままでもあんな姿、誰にでも見せていたのかな?」
「違います!」
ことりは高槻の手を振り払った。
「も、もともとは、先生が晩酌の相手が欲しいって言うから!」
「あれは、君がお気に入りの僕のバカラを割ったから…」
「そんなのは口実です!」
そのまま駆け出して自分の部屋に入ると
ことりは高槻をにらみつけた。
「次はジュースしか飲みません!
あんな手の届くところに、3万円のグラス置いておく先生が悪いんです!」
ばか!
そう小さくののしると
ことりは部屋の窓に鍵をかけて、カーテンを閉めた。
「ばかって…まったく」
高槻はやれやれ、とほほ笑んで
野鳥のさえずりを聞きながら、コーヒーを飲んだ。
ことりは、窓によれかかって、
そして、その場に座り込んでいた。
『私、何しちゃったの…!?』
穴があったら永久に入りたい。
後世に発掘されるまで、この世と別れてしまいたいくらい
ことりは恥ずかしさに悶えた。
その時、こんこんと窓を叩かれる。
「な、なによあの男…」
つぶやいて、返事もしないでいると
またもやこんこんと窓を叩く音。
しばらく黙っていると、今度は部屋の入り口をこんこんと叩かれた。
「ちょ、しつこい…」
鍵がかかっていないのを見つけて、ことりが慌ててドアに近寄ると
もう一度ノックされる。
「ことり君、今日は休みだろう?
用事に付き合ってくれないかな?
出かけるから、あと1時間で支度してね」
その言い方に、ことりに拒否権がないことは明白だった。
ことりはため息を吐き、まだ茹蛸のような顔に手を当てて
しぶしぶと支度にとりかかった。