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呪いのしるしを、君の体に。
第6章 6
高槻の行動にいちいちドキドキしていたら、この先きっと身が持たない。
ことりはそう感じて、何かあった時は
福沢諭吉先生を思い描くようにしようと心に決めた時。
「ついたよ」
見れば、木立の中に立つ美しい教会だった。
「わぁ、きれい!」
「行くよ、おいで」
伸ばされた手に、つい掴まろうとして
ことりは慌てて自分の手を引っ込めた。
「心外だな…そこまで僕が嫌われるなんて」
「自業自得ですよ」
2人はそんなやり取りをしながら中に入る。
すでにそこに集まって来ていた人々が
温かい笑顔で迎え入れてくれた。
「先生、クリスチャンだったんですか?」
「違うけど、たまに来るんだよ。
なんだか神聖な気持ちになるし
ここの教会は旅行雑誌にも載ってる有名な場所だから
君も見てみたいかと思って」
旅行客だと、あまりこういう空間に入らないので
なかなか珍しいから連れてきたかったんだよと言われると
ことりは悪い気分ではなかった。
「やっぱり、クリスチャンって顔してないですもんね。
神聖な神に誓えるほど先生は清らかじゃないし」
そうことりが安心していると
高槻にほっぺをつままれた。
「あのねぇことり君。
確かにそうだけど、あまりそういうこと言っていると」
後でお仕置きするよ。
ことりの耳にそう小さく吹きかけ
ついでに舌先でほんの少し舐めた。
「っ!」
「ほら、礼拝始まるから」
そう言って賛美歌を歌うので立ち上がったのだが
顔が真っ赤になりすぎて、ちっともメロディが入ってこなかった。
牧師先生のありがたいお話になると
何を考えているのかわからないが、高槻はそっとことりの手を握った。
「なにして…!」
「静かに」
口に人差し指を当てて、ウインクをされた。
ここまで完璧な男性がこの世の中にいるんだと
次元の違いを見せつけられた。
手をこっそり振りほどこうとしたのだが
高槻は握りしめたまま放す様子もなく
ありがたいお話どころではなかった。