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秘愛
第3章 なにがあったの・・?
今にも降り出しそうな雲行きを、眉をしかめて見ながら廊下を進む。
その日は鉛色の空に気を取られて、
喫煙室に目をやることなく通り過ぎてしまった。
向かう先は遙香のいる商品開発部。
正面に大都会のビル群がそびえ立つのを見ながら角を曲がると、
ドアの開いている会議室から声が聞こえた。
「めずらしいよな、奥村さんがミスるなんて」
その言葉に一瞬足は止まった。
・・奥村さんがミス?・・
孝明は声の主がわからないまま、話を盗み聞こうと立ち止った。
「今回はたまたま部長たちのスケジュールが空いてたからいいけどな」
「ほんとだよ。でもどうしちゃったんだろう、奥村さん。
なんか元気もないしな」
その後すぐに椅子を引く音がした。
どうやら中から出てくるようだ。
孝明は部屋の中へ顔をむけないようにして、まっすぐ前を向いてドアの前を通り過ぎた。
しだいに歩く速度は遅くなり、
商品開発部のドアの前まで来ると孝明は、ほんの少しの間立ち尽くしてしまった。
さっき聞いた話が頭の中をよぎる。
ドアを開け、もしも中にいる遙香と目があったら・・
フッと息を吐き、ドアを開ける。
しかし、遙香の姿はなかった。