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秘愛
第3章 なにがあったの・・?
ほんの5分ほどで用件を済ませ、来た廊下を戻っていく。
相変わらずの空の色は気分を沈めてくれる。
ガラスに、水滴がポツリ、と当たったのが見えた。
とうとう降り出してきた。
喫煙室が近づき、今度は中の様子を窺う。
すると、丸まった女の背中が目に入った。
遙香だった。
ガラス越しになんとか遙香の顔が見えないか、角度を変えて覗き込んでみる。
それでも見えないので、思い切ってドアを開けることにした。
コンコン、と小さく音をたててから喫煙室のドアを開ける。
振り返らない遙香に孝明は声をかけた。
「奥村さん、お疲れ様です」
その声が孝明のものだと遙香も気づいたのだろう。
頭が少し、動いた。
でもすぐには顔を見せようとしなかった。
「・・篠宮くんか・・おつかれ・・」
沈んだその声から、
さっき盗み聞いてしまった話が本物なのだとはっきりとわかった。
だが自分からそのことに触れるのはやめようと、孝明は普段通りに話しかける。