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秘愛  
第1章 暑さから熱さへ・・
「すいません、せっかく・・
 あ、奥村さんもコーヒー飲みますか?オレとってきますよ」

「ううん、いいよ。これ、いただくから」

へ?と口をあけたマヌケ面で見返すとほぼ同時に、
遙香がカウンターの上の紙コップに手を伸ばした。

孝明がすでに口をつけているコーヒーを、一口すすった。

「あの!それもう口つけちゃってあって!」

手をバタバタさせる孝明の慌て振りを遙香は笑う。

「別に困ることはないわよ、篠宮くんと間接キスしても」

紙コップをカウンターに戻すと高らかな笑い声をあげた。
今まで聞いたことのない、女子っぽい笑い声。
いつもキリッとしているやり手女史でもあんなふうに笑うんだ・・

「さて、帰るとするかな。
 あとは一人でゆっくりとたそがれてちょうだい」

言い残して足早にドアに近づく。

お疲れ様でした、と後姿に声をかけると、遙香はくるりと振り返って
おつかれ、と手をあげた。
口には出して言えないけど、
かわいらしい顔だった。


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