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よくある恋愛モノ
第4章 嵐に呑まれて
忘れたというのはその先輩の方のはずだ。
「え、そんな連絡した覚えないんだけど。その紙いつきたの?」
「き、昨日の終礼前に、机の上に……」
「その紙今持ってる?」
「あ、あの……今、は……」
持っているはずがない。いくら美和でも偽物かもしれないなどと警戒して保管したりはしない。
「捨てちゃって……」
「嘘なんでしょ? どうしてそういう嘘をつくの? 悪いけど、今のままだと周りにも迷惑だし、風紀委員としてありえないから」
先輩の失望した表情に何も悪くはないはずの美和の心が痛む。
「まず謝ろうとするでしょ、普通。言い逃れとか本当に……どうしてそういう行動ができるのか考えられない」
「す、すみません……」
先輩はさらに何か言いかけてやめ、もう一度失望した目を美和に向けて教室に戻っていった。
“先輩の信頼を裏切った……”
美和は自分の掛かった罠に気がつく余裕などなかった−−−