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よくある恋愛モノ
第4章 嵐に呑まれて
その数日後の放課後、美和は日直で残っていた。
「川本さん、書き終わった?」
もう一人の日直が日誌を覗き込んで尋ねる。
「あ、もうちょっと。ていうかあと日誌と鍵渡しにいくだけだから、いいよ、先帰ってもらって」
「ほんとー? ごめんねー」
「ううん、全然」
「ありがとー、じゃーねー」
友達を先に帰し、しばらくして日誌を書きおわった美和も立ち上がる。
「って、あれ? 鍵……」
いつも扉にかかっている鍵がない。
友達が鍵だけ渡しにいったとは思えないし、美和も今日の体育の後にここに掛けてから触っていない。
“盗まれた……?”
さすがの美和もそんな考えが頭をよぎる。
だが、人を疑わない美和にとってその可能性を信じることは難しかった。
“とりあえず先生に話そう”
美和は教室から出て階段を降り、職員室に向かう。
トントン
「失礼します……」
美和の担任はデスクでパソコン作業をしていた。
「先生……」
「はい」
美和は深く息を吸って呼吸を整える。
「あの……教室に鍵がなくて……どこかで落としたりしたかも……」
「は?」
前回に引き続く模範生の失敗に先生は目を丸くする。
「今、心当たりあるとこ探してます……すみません……」
そのまま立ち去ろうとする美和に、先生が声をかけた。