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よくある恋愛モノ
第5章 すれ違い
だが、そんなことは2人にもわからない−−−
ただただ、普段と違う自分に戸惑うだけ。
美和は不安と苛立ちを抱えたまま、その日1日を過ごした。
そして、放課後−−−
「なぎさー! なぎさー? 」
だが、屋上に人影はない。
「……人を呼び出しといて待たせるなんて非常識以外のなんなのよ……」
そもそも、呼び出すくらいなら授業や終礼に出ればいいものを……
カチッ…
ドアの方から物音がして、美和は振り向いた。
だが、それはドアが開いた音ではなかった。
「え……ちょっ、何コレ!? 開かなくなったんだけど! 凪の嫌がらせ!?」
こんな放課後に屋上に来る人などいない
そのせいか、下校時刻を過ぎても週番は廻って来なかった
せめて教室にカバンがあれば気がついて貰えただろうが、カバンは持ってきてしまった
だが携帯は学校の貴重品ボックスの中だ
誰にも気がついてもらえないまま、日が暮れていく。
そして−−−
ポツッ…ポツッ…
サァァァ……
美和の頬に水滴が当たったかと思うと、あっという間に激しい雨になる
夕立だ
「ちょっと…誰か来ないの……すごい…寒いよ……」
今の美和は半袖
すぐに止んだとしても、5月の夜を濡れたまま過ごすのは、危険だ
“凪……少しは…信じてたのに……”
裏切られた−−−
朦朧とする美和の頬を、雨ではない別の何かが濡らしていた−−−