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よくある恋愛モノ
第5章 すれ違い
夜−−−
凪はいつものように家に帰らずフラフラしていた
「くそっ……」
いつも以上にイラついているようだ
この前美和に怒鳴られたこともあるが、主な原因は今日の夕方のこと−−−
ガチャ
雨のせいで凪は珍しく明るいうちに帰らざるをえなかった
「あれ、お兄ちゃん?」
ドアの音に気が付き、妹が部屋から顔を覗かせる
「陽菜乃……っ」
“早く帰るとコイツと会うから嫌なんだっ”
凪はただでさえ不機嫌な顔に嫌悪の表情を浮かべた
「やっと更正したかと思ったけど、違うみたいだね」
その顔を見て、陽菜乃はクスクスと笑う
「黙れ……ガキは真面目に勉強でもしてろ」
「1つしか歳違わないくせに」
むきになる兄を見て妹は楽しそうだ
無視して通り過ぎようとする凪に、陽菜乃は後ろから声をかけた
「今日陸にぃ帰って来るって」
その言葉に、凪は動きを止める
陸にぃとは、大学院に通っている凪たちの兄だ
通っている、といっても研究ばかりでほとんど家には帰らない
「お父さんは遅いみたいだけど、陸にぃはもうそろそろ帰るんじゃないかな。さっき……あっ、お兄ちゃん!」
凪は陽菜乃の言葉を最後まで聞かず、逃げるように玄関に戻った