- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
よくある恋愛モノ
第5章 すれ違い
ドンッ
「……っ」
「…ったた……って、凪! 久しぶりだなぁ」
“う゛……”
「陸……」
そこには、大柄で優しそうな男が立っていた
いや、“優しそう”というよりは……
「相変わらずのほほんとしてるねっ、陸にぃ。大丈夫?」
「ん? 大丈夫大丈夫」
そして陸は凪を覗き込む
「大丈夫〜?」
「…っ……うるせ」
陸にぃはそんな凪の態度を見て笑っている
馬鹿にした笑いではなく、おじいちゃんが小さくて生意気な孫を見るような……
“相変わらず…癇に触るっ……”
凪は舌打ちをすると、陸を押し退けて外へ向かった
そんな凪の背中に、陸がのほほんと声をかける
「夜中からまた雨だからあんまり遅くなるなよ〜」
そう言うと玄関を閉めた
凪がイライラしている原因はこれだった
“あいつ…何考えてるかわかんねんだよっ……”
彼はもうかれこれ五時間以上イラつきっ放しだ
“だいたいなんでいつもあんな……”
ヴー…ヴー…
そのとき、携帯が鳴った
凪はズボンの後ろポケットから携帯を取り出す
ちなみに凪はガラケーである
親と滅多に話さない不良は、スマホなど持つ機会も必要もなかった