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よくある恋愛モノ
第2章 嵐の始まり
「じゃあこの行、田中」
「そー、うぃーれありーあーすたっくうぃず……」
たどたどしく読み終える。高一男子としては当たり前だろう。
「もっと音読ちゃんとやれよー。川本、今のとこ訳して」
「そうなると実のところ、私たちは2つのまったく異なる種類のもの、すなわち世にある物質的な物と主観的体験とを押し付けられてしまうわけです」
しっかり予習をしてきている美和はすらすらと答える。
「完璧だな」
美和は学年でも1、2位を争うほど優秀である。
「森継、次の行読んで」
「You might like to accept that they are different,and ……」
教室全体からほぅ……という賞賛のため息がこぼれる。
もっとも、みんな早すぎてどこを読んでいるか分からないのだが。
「やっぱすごいねー」
「ネイティブだし、課題テストで学年3位になるだけあるわー」
そんな囁き声も聞こえる。
そう、星来は入学早々学年3位になるほどの能力の持ち主なのだ。
だが、上には上がいる。
美和は課題テストで学年2位だった。
1位は……
「和泉、訳せ」
「……あなたは、その2つは異なっていること、さらに世の中は2つの根本的に違う種類のものでまさに成り立っているのである、ということをいうことを受け入れたいかもしれない」
凪だ。
「やべー……」
「まさかの予習やってあんのかな?」
「んなわけないでしょ(笑) だからカッコいいんじゃん」
凪はいわゆる天才型だ。
努力型の美和はあんなやつに負けているのかといつも悔しい思いをしていた。