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よくある恋愛モノ
第8章 伝わらない気持ち
「毎年この地区でやってるでしょ、8月の初めに」
“……”
凪だって存在を忘れたわけではない
その日は人が多く出歩いていて、警備も厳しいので喧嘩ができないのだ
いつにも増してストレスが溜まる
それが浴衣祭りだった
「それがなんだ」
「ちょうど陸にぃも帰ってるし、せっかくだから久しぶりに3人で行かない?」
行くと思っているのだろうか……
凪はそう思っていたが、女の勘は鋭いものだ
陽菜乃は最近の凪の微妙な変化を、敏感に感じ取っていた
“最近は夜ご飯も一緒に食べるようになったし”
そして、その変化に恐らく美和が関わっているであろうことも−−−
「あ、美和ちゃんも誘おっかなー」
ピクッ…
「どうする? なんなら3人だけで行ってくるけど」
凪はどう答えたら良いか一瞬迷い−−−
「……行ってやるよ」
わざとらしくため息をついてそう言ったのだった
そして、浴衣祭り当日−−−
「凪ー、陽菜乃ー、置いてくぞー」
「ちょっと待って陸にぃ!」