- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
よくある恋愛モノ
第8章 伝わらない気持ち
凪は一刻も早く会場に行こうと明日を早めるが、慣れない下駄に足がもつれる
「めんどくせぇなっ……」
そんな凪を見て、陽菜乃は思わず笑ってしまった
「どうしたの?」
凪の様子がおかしいことに気付かない陸は、陽菜乃を不思議そうに見る
「ううん…クスッ……なんでもない!」
そうこうしているうちに、会場に到着した
「美和ちゃん!」
陽菜乃はいち早く美和を見つけて駆け寄る
ドクン…
凪は自分の胸が不自然に脈打つのを感じた
以前は分からなかったこの気持ちが、今はなんとなく分かる
凪はその気持ちを悟られないように、小さく深呼吸をして一歩前に出た−−−
だが、先ほどまでもっと早くと進めていた歩はそこで止まってしまった
「陽菜乃ちゃん、紹介するね。同級生の森継星来。帰国子女なんだよ。星来、こっちは凪の妹の陽菜乃ちゃん」
「星来さん……美人ですねっ!」
陽菜乃のフレンドリーな発言に、星来は困る
「……どうも」
お嬢様からしてみれば、社交辞令でいくらでも言われている言葉だ
だが、この馴々しいとも取れる率直な態度は……
事実とはいえ、こういう言い方をされると戸惑ってしまう
「こっちは凪のお兄さんの陸くん」