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よくある恋愛モノ
第8章 伝わらない気持ち
“寝呆けてる?”
いや、違う
ぼんやりとした目の奥に、確かな光がある
獲物を狙うような、爛々と輝く何か−−−
「早くしろ」
口と態度はそう語るのに、瞳だけが違うと言っている
もっとそこにいろと−−−
「あ、えと、なんで星来置いて先かえったのかわいそうじゃんセイラワナギサノコトスキナノニドウシテキヅイテアゲラレナイノこのばかっ!」
「……は?」
焦りのあまり美和はものすごく早口になり、凪は何も聞き取れなかった
いや、正確にいうと、最後の「このばかっ!」だけは嫌というほど良く聞こえたのだが、他の部分が全くわからなかったのだ
「星座? 月?」
一切関係のない言葉を繰り返す
「あー……」
美和は自分の言葉が通じなかったことに気がつき、更に慌てた
「そ、そう! お祭りで天体についてやってる屋台が出てて、月と星は全く無関係じゃないとかそういう話とかしてて、おもしろかったよっ!」
「はぁ?」
「じゃ!」
美和はそういうと、益々混乱した凪をそのままに、風のように去っていった−−−
9月−−−
結局あの浴衣祭りの日から2人だけで会うこともなく、美和は勉強に勤しみ、凪は美和の発した言葉にモヤモヤしたまま残りの夏休みを終えていた