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よくある恋愛モノ
第9章 不安
「……」
エレベーターの床には荷物が散乱し、二人とも押し黙ったまま時間が過ぎる
「……は、早くどいてよ…」
美和は俯いて精一杯冷静に言った
だが、返事がない
「ねぇ、凪……凪?」
不自然な視線を感じて顔を上げると、美和は目を見開いた
“キ、ス……してる!?”
唇は凪のそれに包まれ、美和の鼓動は自分の耳に聞こえる程高鳴る
“うそ……”
「あー、補習忘れたからって呼び出しとかまじタルいっすー」
寅次郎はついさっきまで自分のかつてのマドンナがいたとはつゆしらず、エレベーターに続く廊下を歩いていた
“疲れてるし、ちょっとくらい使ったってバレないっすよね”
そしてエレベーターのボタンを押す
チンッ
「……」
“!!!???”
チンッ
背後でエレベーターが開閉する気配を感じ、凪はハッとして身を引いた
この箱に入れられてから一分も経っていなかったのだが、まるで時が止まったかのようだった
“あれからどのくらいたったんだ……俺は…何を……”
今度は凪が自分自身の行動に目を見開く番だった
「信じられない……」