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rena's world story★a.n.r.r.y
第7章 祝福の日

ふいっと顔を逸らした母親が、窓の外に視線を向けた。

……ガラスに反射して映るその瞳が、少し揺れているように見える。


「……母さん」


俺もソファから立ち上がって、その横に並んだ。

……この背の高さと体格は、消えた父親譲り。

見下ろす母親の背中は余りにも小さい。


「心配しなくても、ちゃんと老後まで面倒みるよ」

「………!」

「俺、あなたの一人息子だからね」

「……はぁ?」


東京タワーを見つめたままそう言った俺を、母親が怪訝そうに見上げてくる。


「引退したらどこか旅行にでも行かない?
瑠璃のご両親も一緒に」

「……何よ急に。
話を勝手にすり変えないでちょうだい」

「俺にはそう聞こえたけど?」

「冗談じゃないわ。
私は医者よ、自分の事は自分で出来ますっ」

「………」

「あーやだやだ、恩着せがましいったら」


ブツブツ言いながら再びハンドバッグを取りに戻る母親。

笑いながらその後ろ姿を見送ると

着信音が鳴り響いて、その顔がパッと華やいだ。


「あら! 奥様もう到着されたのね」

「………!」

「大変、すぐにお迎えに行かなくちゃ」



……ん?

奥様?



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