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rena's world story★a.n.r.r.y
第10章 愛してる
……もう、それって充分凄いってことじゃない。
ヒメの口からスラスラと長所が飛び出てくるから、思わず吹き出してしまった。
クスクス笑う私。
……でも、ヒメは切ない笑みを浮かべる。
「……ガキの頃からずっとそうだったけど
この歳になってもまだ、何かひとつを手にした感触は得られない」
「………!」
「高校の時のチャラさが、大分マシになっただけってくらいで……」
「………」
……なぜか、ふいに視線を落とすヒメ。
トクントクンと鼓動が大きくなっていく。
「……ヒメ?」
「………」
そっと呼び掛けると
自分の手のひらを見つめて、ヒメが静かに口を開いた。
「── 弱いよ、俺は」
「………!」
「普段は隠してるけど。
途方に暮れるほど迷うし、嫌になるほど悩む」
「………っ」
「ただ、周りの環境に恵まれてるってだけで
……美和が思ってる以上に、俺は弱い」