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rena's world story★a.n.r.r.y
第14章 理由:面白そうだから
* * *
……5月とはいえ、この時間にもなれば外は寒い。
屋上には行かずに
フロアの奥にある、ガラスで仕切られたフリースペースへ移動した。
スタンドテーブルとL型ソファーが並ぶ、広さ6畳程の部屋。
備え付けのクッションを抱えて、端に腰掛けると
「今夜は付き合えねぇから」
自由に飲める社員用のエスプレッソマシーンに、カプセルを放り込みながら
私に背を向けたまま姫宮さんがそう呟いた。
「……分かってます」
抽出される芳醇な香りで、やっと落ち着きが戻った気がする。
“ 泣けばなんとかしてくれると思ってる ”
……泣いてはないけど、グサッと刺さった。
ほんとバカだな私。
既婚者を引き留めてどーすんのよ。
「いいですね、毎日奥様の手料理が待ってるって…」
「その奥様が、魔王の晩餐会に行っちまってんだよ。
だから俺も今日は飲み」
「……えっ?」
「暗黙のルールで、裏で野郎だけの “ 被害者の会 ” が開かれる。
いつから定例化したのか忘れたけど」