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rena's world story★a.n.r.r.y
第15章 考えたこともない
「では、帰ります!
鈴木さん瀬名さん、お疲れさまでした♡」
蓮のフォローによって水を得た魚のように
スキップしそうなくらい軽い足取りで、佐伯は笑顔で去っていった。
“ 相手の気持ちを考えない、残念な虫 ”
「………」
そういやあいつ、俺のこと好きだったんだっけ。
俺もそれに気付いて胸痛めたんだっけ。
……お互い切替え早ぇな。
「瀬名」
ウキウキ感を溢れさせて、男の元へ向かう佐伯の背中を見つめていると
後ろから蓮が俺を呼んだ。
「これ、お前に」
「……あ?」
「ヒメから預かった」
優しさ溢れるこいつの切替えも大概早い。
振り返ると、何事も無かったように蓮がスーツのポケットから何かを取り出した。
あー、3月に飲んだ時の金か。
いつもは会計の金額なんて見ずにカードを出す俺が
思わず伝票を二度見して引くくらい……ホストクラブかってツッコむ程の支払いだった。
「今更感ハンパねぇけど、チャラ男のくせに律儀だな。
まぁ、高いボトルばかり空けやがったから当然か…」
「違うよ、金じゃない。
あの時、全部俺が奢るってカッコつけたのは瀬名だろ」
「………」
「俺も払わないよ、今更。
御馳走様でした」