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rena's world story★a.n.r.r.y
第15章 考えたこともない
……見開いた蓮の瞳に、俺が映って揺れている。
その自分の顔が微笑んでいるような気がして、思わず目を逸らした。
「医者には、治したいなら仕事を辞めろとまで言われてた」
「………!」
「……マジで眠れねぇんだ。
暗い天井を見続けて、ひたすら夜が明けるのを待つだけ」
「………」
「情けなくて、誰にも言えなかった」
億単位の契約や組織を動かす力はあるのに
たった1人、それも自分自身をコントロールすることが出来ない。
睡眠薬に手を出したのは、そんな弱い自分を誰にも悟られたくなかったからだ。
「って、お前達にはバレてたんだっけ」
「……瀬名……」
「蘭には隠し通せてたのに、やっぱり近い奴らは騙せねぇのな」
……もう完全に笑っていると自覚して、俺は蓮に視線を戻した。
眠りから目覚めるという、ごく普通の人間の行動。
当たり前に出来るようになった1日の始まりに、今でも心が震える。
「見てみろ、この血行の良さを」
「………!」
「重度の睡眠障害を、蘭が一瞬で治してくれた。
……俺を救ってくれたんだ」
広げて見せた両手を、ぎゅっと掴んで拳を作った。
理由なんて、ない。
「……ただ、特別なんだよ」