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rena's world story★a.n.r.r.y
第16章 ミッション終了
「今回はマジで何もねぇから」
「………!」
「誰も呼んでねぇし、何もしない」
いつもなら、日替わりで違うブレスレットが巻かれる手首。
クロノグラフの腕時計だけを付けて、姫宮さんがそう言い切った。
……何も、しない?
「どーいう意味ですか…」
「作戦も戦術も無いって意味」
「………!」
「嘘つきなハゲの束縛から救うわけでもねぇし
店の月売上を1位にすることもないし、一世一代の公開処刑をサポートする必要もない」
「???」
「……仲間のメッセージを読むわけでもない。
ただ、見物するってだけだ」
途中、ちょっと何言ってるか分からなかったけど
何かを思い返しているようで、姫宮さんはふっと笑みを浮かべた。
……口調は変わらないし、髪が黒いってことだけなのに
何故か一瞬、鈴木さんの笑顔と重なったのはどうしてかな。
「船上で何を見ようがお前が何を感じようが、俺は一切関知しないけど
……これだけは言える」
……再びドキンと跳ねる心臓。
有名なアクション映画の台詞を引用して、彼がもう一歩私に近付いた。
「 “ 瀬名葵は、失敗しない ” 」
「………っ」
「そう確信する俺のカンは、絶対に外れない」
腕を組んだ姫宮さんの瞳が、キラリと光った。
「ただの尾行、されど尾行。
全力で楽しもうぜ」