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rena's world story★a.n.r.r.y
第17章 いらねぇよ
* * *
祝日でも連休でも無い単なる土曜。
どうせ観光客がメインで、客数なんて知れた程度だと思っていたが
記念式典なんて堅苦しい儀式までやるくらい、今日は特別なクルーズだったようだ。
船首・前方に位置する2階、メインダイニングの客席は
ざっと200人はいるんじゃねぇかって程に、ほぼ満員に近いゲストで溢れていた。
解放感のある一面の窓の外で、見慣れた東京の夜景が輝き
中央防波堤の向こう側で、羽田から飛行機が飛び立っていく。
「── 今、凄く驚いているの」
店員が注いだヴィンテージワインを口に運びながら、上昇する機体を眺めていると
一回り年下とは到底思えない、気だるく掠れた女の声が耳に届いた。
「瀬名さんって、感情表出が出来るのね」
「……!」
「一瞬、乗船する間際に間違いなく笑ったでしょう」
「………」
「……私に向けた笑顔じゃなかったけど」
……顔はすぐ横の窓ガラスに向けたまま、視線だけ正面に戻すと
今日で21歳になったという、海運最大手のご令嬢が
テーブルに肘を付けて爪を噛みながら、俺を見て口角を上げた。