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rena's world story★a.n.r.r.y
第17章 いらねぇよ
「……気のせいですよ」
再び視線を右側に逸らした。
10コも離れたガキに対して
最初の挨拶から敬語を貫いているのは、少しでも距離を保ちたいという意思表示。
「愛想笑いしか出来ない人間ですから」
「私には、それさえも出来ないってこと?」
「というより、俺にその “ 意思 ” がありません」
「………!」
「機嫌を取ってまでこの場を盛り上げようなんて、一切思っていないので」
……出港してからまだ30分と経っていない船内。
他人が聞いたら、確実に避難の目で見られる程冷えた言葉。
ただ、俺達の座るテーブルの周りはわざと空間が作られていて
1番近い席でディナーを楽しむ客にも、この会話は聞こえていない。
「……ふふっ」
瞼のすぐ上で、真っ直ぐ揃えた前髪。
日本人形のような漆黒のストレートヘア。
分かり易く突き放す俺の発言を、何事も無く吸い込むように
ワイングラスを持ち上げて、彼女は俺の斜め後ろにその手を伸ばした。
「後方にいらっしゃる、赤いドレスの女性はお知り合い?」
「………!」
「さっきからチラチラ見られてる」