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rena's world story★a.n.r.r.y
第18章 月灯りの下で
「……おい、マジで引いてんじゃねぇよ」
口を開けたまま固まる私を見て、葵が怪訝そうに眉を寄せた。
「なんだその “ この人何言っちゃってんの ” って顔」
「し、してません! 引いてません…」
「なんで敬語」
「だ、だって……っ」
帰路に向けて船が動き出して、心地良い夜風が吹き抜けるのに
大量の汗が吹き出すかの如く、私の全身は火傷したように熱い。
……心臓が、壊れたように高鳴ってる。
「……あの、葵…」
「こっち来いよ」
「………!」
「もっと近くに」
渡されたシャンパングラスは、すぐに取り上げられて
スタンドテーブルにそれを置くと、葵が右手を広げた。
「………っ」
ガーデンベンチに並んで座る、葵と私の間は数十センチ。
……それでも、腰を浮かして一歩近付くと
葵の香りがふわっと広がって、私の左肩が彼の右胸に触れた。
「………!」
抱えられるように回された手が、私の後頭部に移動して
優しく触れるように、髪をポンポンと撫でられる。
……ねぇ、どうしよう。
本当にヤバイ。
胸がぎゅうっと締めつけられて、苦しい……