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rena's world story★a.n.r.r.y
第18章 月灯りの下で
明らかに疲労の色が見えるその頬を、そっと右手で包み込むと
じっと私を見ていた葵が、小さく息を吐いた。
「マジで、自分のギャップにビビるわ」
「……えっ?」
私の右手に触れて、葵がふっと笑う。
「ギャップって…?」
「自他共に認める冷たい男だから。
仕事中の俺は、お前をドン引きさせる自信がある」
「………!」
「さっきの攻防戦を見せてやりてぇよ」
“ 例え相手がお嬢であろうと誰であろうと、興味ねぇものは興味ねぇと突き放すし
誘惑に惑わされることなく、ザクザクぶっ刺して捨てる性格 ”
なぜか楽しそうな葵を見ていたら、姫宮さんの言葉を思い出した。
離れて見物している限りでは、冷酷さは感じなかったけどな。
普段の悪い口調や態度で、そのまま仕事してるわけじゃないだろうし……
「……だけど、不思議だな」
私の指に自分の指を絡めて、葵が視線を落とした。
「蘭といる時が、本来の自分のような気がする」
「………!」
「……なんて
こんな優しく穏やかな状態が、俺なわけねぇのにな」
「………っ」
「そんな人間にはなれないってこと
……俺自身が1番よく分かっているのに」