この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
rena's world story★a.n.r.r.y
第18章 月灯りの下で
独り言のように呟いた葵の瞳が、小さく揺れる。
……この、瞳。
あの時と同じ、深い切なさを感じる色だ。
「……葵」
きっとその理由を聞いても、今は答えてくれない気がしたから
私は葵の手をぎゅっと握った。
「まだクルーズ終わってないけど
あの、お相手のお嬢様は……」
「強制終了しました」
「……だ、大丈夫なの?
だってまだ船内に…」
「財閥の超セレブが目を光らせてるんだ。
さすがにドアを蹴破ってまで入って来れねぇだろ」
「………」
吸っていい?と聞かれて頷くと、葵がポケットから煙草を取り出した。
私から離した手を添えて、火を付ける姿を見ていると
確かに仕事モードは解除したように見受けられるけど……
「心配すんな、マジで終わったから」
逆側に煙を吐きながら、葵が続ける。
「もう二度と会わない理由をハッキリ伝えた。
婚約した彼女がいるから、気持ちには応えられないって」
「……ほ、ほんと!?」
「あぁ。
わざわざ頭を下げて、年下の生意気なガキに向けて敬語で」
「………っ///」
「屈辱」
膝に両手を添えて再現する葵を見て、自然と笑みが零れてしまう。
……婚約。
そっか、葵……ちゃんと言葉にしてくれたんだ……