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rena's world story★a.n.r.r.y
第18章 月灯りの下で
東京湾に架かる美しい吊り橋が、前方に迫ってくる。
足を組み直してその輝きを見つめる、葵の横顔が綺麗で
私は夜景なんてそっちのけで彼を見つめた。
「……私も、葵と同じ。
未来を想像するだけで楽しいわ」
悲しいことなんて、何ひとつとして無い。
「独りだなんて、そんなこと言わないで…」
「どーすんの、結婚式とか。
新郎側の親族席がガラ空きって異様だろ」
「………!」
「……俺はいい。
だけどお前が何か言われることだけは避けたい」
声を落とした葵が、前を向いたまま小さく続ける。
「帰省先のねぇ正月とか。
……寂しいと思うぜ、 “ 子供 ” にとっては」
「………っ」
「嫌でも毎年巡ってくるからな。
その度に悲しませると思うと……妄想段階の今でも相当堪える」
─── 葵は、人の目なんて一切気にしない男。
他人にどう思われようと、どう評価されようと関係なく
見栄を張ることも媚びることもせず、ブレない強い芯を持っている。
ご両親が失踪後、幾度となく味わってきたであろう苦しみも完璧に隠して
今では大企業の一線を進む彼に、恐怖や不安は無いとさえ感じる。
……だから
葵がこんな風に弱さを見せるのは
全て、私の………