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rena's world story★a.n.r.r.y
第18章 月灯りの下で

「……ねぇ、葵」


更に体を密着させて、葵の首に腕を絡ませる。
壊れたように高鳴る心臓とこの興奮が……直接伝わるように。


「もっと、して」

「……何を?」

「キス」

「キスだけ?」

「そんなわけないでしょ」


冷たいのに、その奥に燃えるような熱さを秘めた鋭い目。

私だけが映ってる。
葵が私だけを見てる。



私の中で、何かが弾けて


……外れた。



「……捕まらないギリギリまで、して」

「ははっ、マジ?」

「本気よ。 本気で煽ってるの」

「………!」


瞳を見つめたまま、トンッと軽く葵の左胸を叩く。


……視力1.5の私の両目と、記憶が正しければ
乗船前、確かにここにカシスのポケットチーフが見えていた。


「……会話は聞こえなかったけど
小さなお嬢様が、同じ色のハンカチを手にしていたのは見えたわ」


途中退席してしまったのは
奪い返しに飛び出したい怒りを抑えるのが必死だったから。


……葵が身に付けるものひとつ取っても、髪の毛1本でさえも
他の女には渡したくない。


「………」


……あ
やばい

なんか……今更になって……



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