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rena's world story★a.n.r.r.y
第19章 唇に媚薬 ‐ deep love -
左に逸らした俺の視線を逃すまいと
蘭の細い指が伸びてきて、ぐいっと顔を引き戻された。
「絶対に葵の趣味じゃないでしょ。
こんな遊び心のあるお洒落なアウター、葵が自分で選ぶはずがない」
「悪かったな、私服のセンスが無くて…」
「正直言って、してやられた気分よ」
「……は?」
ナイロンパーカーの襟元を、ガシッと両手で掴む蘭。
なぜか鬼火を背負って俺を睨みつけてくる。
「私でさえこの絶妙コーディネートは思いつかない。
葵の隠れた魅力を引き出すなんて……一体何者?」
「………」
「悔しいけど、チョイスした女を褒めてやりたいわ」
「……女?」
「~~女でしょ完全に!!
じゃあなに? 男と2人で買い物したとでも言うの!?」
……ギャーギャー騒いで詰め寄ってくる蘭。
とてもじゃねぇがそうだとは頷けない。
店員が興奮する程に
OLかってツッコむ程に、互いに両手いっぱい紙袋を抱えて
そのままサシで終電まで飲み続けて、今日は軽く二日酔いで……
“ 葵、俺今日1日すっげー楽しかった ”
「………」
茶髪に戻したツーブロックの “ あいつ ” に
酔った勢いでさりげなく名前を呼ばれて、心臓が打たれたなんて
……絶対に言えねぇ。