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rena's world story★a.n.r.r.y
第2章 招待状と秋の風
美和の頭に手を乗せたまま、俺の体も自然と停止。
「………」
“ 届いたら早めに返事を出すのがマナー ” を律儀に守り
出席をマルで囲んで、3日後にポストへ入れてやったのは2ヶ月前。
その封筒の中に返信用ハガキは残っていない。
「……あー、それ…」
「ブレスレット」
「……!」
「ワザとじゃないわ」
俺が切りだしたのと同時に、美和が口を開いた。
……滅多に出さない、低い声で。
「は? なに?」
「今日ヒメが腕に付けてた革のブレスレットが、ソファの上に置きっぱなしだったの」
「……!」
「だから、ここに戻そうと思って。
そしたら手がぶつかって、レターケースが落ちちゃったから」
「………」
「……だから、たまたま見ちゃっただけ」
……淡々と、冷静に、でもものすげぇ早口で
美和は手元に視線を落したまま
「これ、結婚式の招待状だね」
「………」
「…… 鈴 木 蓮 ……」
俺に喋る隙を与えず
新郎の名だけ、ゆっくりと呟いた。