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あるマンションでの出来事
第1章 いつもと同じはずの日常
そう思いながらも、足は止まらない。
むしろ、そこへ行かなければならないような気もする。


鼓動はますます早くなり、茉莉は、ゆっくりと深呼吸で自分自身を整えた。



「何だろう、嫌な予感がする…気のせいならいいけど…」



呟くと言うよりも、自分に言い聞かせているような感じの呟きだ。
鼓動は収まらず、まだ活発に動いている。
部屋の作りは茉莉が住んでいる間取りと変わらない。玄関開けると廊下があって、キッチン、側にトイレと風呂場がある。
奥にダイニング、そして隣にリビングがあるはずだ。
茉莉は、足を止めずにリビングへ向かった。順調にダイニングまで来れたけれど、それもまた不思議だった。茉莉が発する音以外には何も聞こえない部屋の中。そして、目の前にあるリビングに通じる何か違和感がある閉められた扉。
茉莉は息をのみ、その扉に手を掛けて静かに開いた。



「…お、じゃま…します…」



今更な言葉を発し、茉莉は徐々に見え始めた部屋の中を凝視した。
今いる部屋の状況からすると、リビングも整頓された凝ったインテリアに違いない。



「…え…」



まず最初に見えたのは、ベージュの床に無造作に置かれたシーツだった。
予想していなかった光景に、茉莉は思わず驚き、一気に扉を開いた。
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