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あるマンションでの出来事
第2章 変わり始める
「え…え…?誰も住んでないの?」

「住んでないよ。俺の記憶の中では住んでた記憶がない」

「え…それは知らないだけじゃない?」

「そう?ポストには管理会社がチラシとか入れないようにシール貼ってたけど…それも…かなり前から…」

「え…そう、だっけ…?」



佐伯の言葉に、自身の記憶に関して自信を失った茉莉は、首を傾げ昨日の事を思い出すが、女の人の虚ろな表情以外には何も思い出すことが出来ずに、夢を見ていたんだと自身を納得させた。

そう解決すると、途端に頭痛が軽くなった。

一度深く深呼吸をすると、茉莉は佐伯から静かに離れた。



「茉莉、大丈夫?」

「うん、夢だと分かったら急に頭痛が軽くなったの。何だったんだろうね」

「うん…大丈夫ならよかった。会社は?」

「そう!会社!会社に行かなきゃ!!」



慌ててベッドから立ち上がり、茉莉は自身の服を探し始めた。



「茉莉、服はクローゼットだよ」

「え…そうなの…?」

「もう、茉莉…大丈夫?記憶かなり混乱してない?」

「…そりゃ…あんな夢見たら混乱するし、目を覚ましたら凄い状況になってるし、誰でも混乱するでしょ」

「…確かに、そりゃそうだ」



茉莉と佐伯は互いに笑い合い、クローゼットに仕舞われていた服を身に纏うと、準備もそこそこに家を飛び出した。
足早に向かうエレベーターホールへの途中、ふと茉莉は501号室の事が気になり、そこで足を止めた。
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