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あるマンションでの出来事
第2章 変わり始める
「どうして?まだ時間はあるのに…」

「そんな…煽るようなこと言わないで。油断してはいけないから」

「……油断…」

「悪いことをしている時間はスリリングで魅力的。だけど、悪戯な現実は見逃してはくれないんだ」

「………そんな…」

「それに、さっきも言った通りに、茉莉は俺に心を委ねてはいけない。俺は茉莉にとって怖い存在じゃないといけないんだ」

「……なんで…?どうして?…じゃぁ、なんであんなに優しいセックスをするの?」

「…優しい…そうか、優しかったのか…俺、自分では分からなかったよ」

「まるで彼に抱かれてたみたいに優しくて、自ら求めたくなっていくようなセックス…」

「そっか。彼とは上手くいってるんだね」

「……まぁ…」

「じゃ、俺はもっと意地悪にならなきゃな」

「え…?」

「茉莉…家具の色について何か言ってなかった?」

「え?何、急に…確かに…言ってたけど…」



柔らかくなった表情が、突如、茉莉自身でもこわばっていくのを感じていた。
佐伯の存在が部屋の中にいることを感じる前に、茉莉は部屋の家具について疑問を口にしていた。
その時間に戻されたような感覚に陥った茉莉の指先から温かさが抜けていく。

真顔で見つめる茉莉の瞳に映った佐伯の口元は、にやりと笑っていた。
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