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あるマンションでの出来事
第4章 6階と7階
様々なものを見て佐伯も思うところがあったのか、茉莉と同意見だった。
女の人の部屋とは違う、独特な男性の匂い。

どんなにシンプルで片づけられていても、この匂いは隠すことはできない。



「いないのかな?」



物音がしない部屋の中に誰かがいることが考えられない茉莉は、一息つくと、リビングを隅から隅までチェックすると、トイレ、脱衣所の順に扉へ手を掛けた。ギッと鈍い音を立てながら開いていく扉から、その先にある景色が見え始める。ある程度の予想は着いていた茉莉は、何も疑問に思うことなく、扉を全て開ききった。

途端に茉莉の視界が黒くなる。

突然の事に声を上げることなく、茉莉は事態を把握するために脳を動かし、自分自身が置かれている状況について考えた。


なぜ、暗いのか。
なぜ、今この場所に立ったままなのか。
なぜ、重いのか。


逃げる時間もなく、その場に立ち尽くした茉莉に襲い掛かった重い者の正体は、誰かも分からない男の人だった。
覆いかぶさるように抱き着かれ、背中が広く少し大きめな体をした男の人は、そのまま茉莉を脱衣所へ引き寄せた。



「え…ちょっ…!」
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