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あるマンションでの出来事
第4章 6階と7階
「だから…どうしたらいいのか…分からなくて…怖くて…」



要の胸に顔を埋め、身を預ける。
熱いのか、寒いのかも分からない自分の体温を感じ取ってくれるのか、要の力強い手が茉莉の体を包み込む。
要は、ゆっくりと茉莉の背中を撫でていた。



「茉莉…大丈夫…落ち着いて…」

「要…」



いつ恐怖が襲ってくるかも分からない状況の茉莉と要は、力強く互いを抱き締め合い、恐怖と向き合おうと、静かにその時を待った。

けれど、そろそろ追いつく頃のはずが、全く気配すら訪れない。



「ねぇ…要…多分もうすぐだと思うんだけど…」

「そのはずだね」

「全くその気配がないのは、なぜ?」

「それは…俺にも分からないよ。茉莉、ちょっと待って」



要は、ゆっくりと立ち上がると、玄関扉にあるのぞき穴から外の様子を伺った。
もしかしたら、玄関の前で待っているのかもしれない恐怖で、心臓が体を揺らすほど力強い脈を打っている。

落ち着かせようとしていても、震える手は止まらない。


緊張でぎこちない要の様子を、茉莉はじっと見つめるしかなかった。
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