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あるマンションでの出来事
第4章 6階と7階
要の身に何かあったら、自分自身が壊れるかもしれない。それが分かっていても、茉莉は恐怖のあまり、動くことが出来なかった。
人間の本能と言えば、それまでかもしれない。
「要…」
のぞき穴へ顔を近づけたままの要は、無言で集中している。
その後ろから茉莉は、震える唇で要の名前を呼んだ。
「大丈夫。誰もいないみたいだ」
「え…」
「のぞき穴から見える範囲のところには誰もいない」
「そ、そうなの?」
「そうだよ。玄関のカギは掛けてあるし、誰も入れないよ」
「で、でも…」
「俺がいるから大丈夫だよ。向こうもそれが分かってるのかもしれない」
「え…?」
「だって、誰かの都合のいいように、この世界が回ってるのなら、それは茉莉にとっても都合のいいようになっているという事だろ?現に、出張中の俺がここにいる。これは、茉莉にとって悪いこと?」
「ううん…ううん、全然!!」
茉莉は立ち上がり、要に思い切り抱き着いた。顔を埋め、大きな背中を手と腕で感じ取る。吐息は要の首筋を刺激し、茉莉の柔らかい唇は、要の温かな唇を塞いだ。目の前にいる大切な人を一つ一つ確かめるように、茉莉は要と何度も唇を重ね合った。
人間の本能と言えば、それまでかもしれない。
「要…」
のぞき穴へ顔を近づけたままの要は、無言で集中している。
その後ろから茉莉は、震える唇で要の名前を呼んだ。
「大丈夫。誰もいないみたいだ」
「え…」
「のぞき穴から見える範囲のところには誰もいない」
「そ、そうなの?」
「そうだよ。玄関のカギは掛けてあるし、誰も入れないよ」
「で、でも…」
「俺がいるから大丈夫だよ。向こうもそれが分かってるのかもしれない」
「え…?」
「だって、誰かの都合のいいように、この世界が回ってるのなら、それは茉莉にとっても都合のいいようになっているという事だろ?現に、出張中の俺がここにいる。これは、茉莉にとって悪いこと?」
「ううん…ううん、全然!!」
茉莉は立ち上がり、要に思い切り抱き着いた。顔を埋め、大きな背中を手と腕で感じ取る。吐息は要の首筋を刺激し、茉莉の柔らかい唇は、要の温かな唇を塞いだ。目の前にいる大切な人を一つ一つ確かめるように、茉莉は要と何度も唇を重ね合った。