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あるマンションでの出来事
第4章 6階と7階
「だ、大丈夫。きっと、寒いのかもしれないから服着るね」

「?あ、そうだね」



要は水道でタバコの火を消すと、キッチンの三角コーナーへ無造作にタバコを捨てた。
そして要自身も服を身に着けると、笑顔で茉莉へ視線を移し、玄関に移動した。



「要?」

「俺、見てくるよ。ちゃんと、一部屋ずつ見ていくから、俺の姿が見えなくなったら茉莉も、その階には出てもいいよ」

「……あ…うん…」



チクリとした不安による痛みが茉莉の胸の中を刺す。目の前にいるのは大切に思っている要のはずなのに、確信がもてない不安が過った。

要は喫煙者だったのか、そして、こんなにも人を見ない人だったのか…

自分の中にある要の像は、もしかしたら美化されているものなのかもしれない。そう思えば、この不安感も少しは和らぐはずが、そう簡単に思えるはずがない。
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