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第1章 1

婚カツに緊張や焦りを感じていたことが、なんだか急に馬鹿馬鹿しくなる。
そして何もせずに自然に任せて出逢いを求めていた自分がおかしくて、つい笑ってしまった。

「どうしたの？　急に笑って？」

貝塚は濡れた彼女の髪を指に巻き付けて笑った。

「えっ……いや、なんだかおかしくて……」
「何が？」

彼もつられたように笑ってあやみの唇にちょんとキスをする。

「出逢ってこんなすぐに恋人が出来るなんて……思ってもいなかったから」


「えっ？」
「えっ？」

貝塚の笑い顔がフリーズしたように固まる。
それを見てあやみの笑顔も引きつった。

「俺たちって……その……まだ付き合ってないよね？」
「…………は？」

貝塚の言葉は相変わらず優しかったが、どこかよそよそしさを帯び始めていた。