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第2章 2

「あのっ……」

あやみが脳内でそんな熱弁を振るっているのを遮り、荏原が声をかけてくる。

「あのっ……すいませんでした!!」
「えっ？」

気弱な彼は泣き出しそうなくらいに気を張ってあやみを見詰めていた。

「そ、そのっ……責任も取れないのに……その……してしまってっ……」

彼の顔は買いたくもない商品を無理矢理買わされ、何とか返品したいというような切羽詰まったものだった。

「責任って……」
「こういうことは恋人同士がするものであって……いくら慰めて貰っていると分かっていても……甘えすぎてしまってすいませんっ!!」

荏原は深く頭を下げ、怯えたようにあげようとしない。

「だったら付き合っちゃおうか！」などと気安く言える空気ではなかった。
『恋人同士がするものであって』という言葉に、彼があやみと付き合う気など毛頭ないという意思が嫌でも汲んで取れる。

三十半ばの女は気安く返品など出来ない。
とんでもないことをしてしまった。
そういう彼の気持ちが手に取るようにわかってしまったから。