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第3章 3

家に帰ったあやみはいつも通り母親の作った食事を食べ、特に新しい話題のない会話を両親として、洗い物だけをすると自室へ戻った。

ぱふんっとベッドに倒れてから枕を手繰り寄せ、目を閉じる。

「タクト……」

禁じていたその名前を呼び、ぎゅっと枕を胸に抱き締める。
タクトとはもちろん別れた彼の名前ではない。
あやみの旦那の名前だ。
脳内限定の旦那だが。
タクトとは二年前から付き合い始め、去年結婚をして晴れて夫婦となった。
くどいようだがすべて脳内での出来事である。

本気の婚カツを始めると決意してからタクトのことは忘れると決意していた。
しかし僅か二週間で涙の再会となってしまう。

どうでもいいことだが、シンヤは完璧な男だった。
常に優しく、いつでもあやみの味方でいてくれる。
彼女が失敗をしたときはいつでも的確な言葉で慰めてくれたし、些細なことでも上手くいったときは自分のことのように悦んでくれる。