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sunset~君の光になりたい
第8章 hold on

 その時、ライブハウスの中から男性スタッフが出て来た。

「Tの1番の方いらっしゃいましたら、お入りくださいー!Tの1番の方ー!」

 千波はチケットに書かれている番号を確かめると、会場入口に小走りに向かいスタッフにチケットを見せ中へ入る。

「私は大丈夫だから。お土産買って帰るからね?薬飲んで寝てね」

 千波は電話を切った。
 トラブルが続出したインストアだったが、CDは沢山売れた。
 
『なんだか面白かったね』
『この店のスタッフは、変で楽しいね』
 と、客たちに口々に褒めてもらい……?褒められたのかどうかは分からないが。とにかく評判は上々で、メンバーもとても喜んだ。
 ペコは、
『次から次へとあんた達がやらかしてくれて、あたしゃ今日一日で二十年は歳取ったわぁ……』
 とライヴの直後は抜け殻のように疲れていた。
 その後、アーティスト側からのライブの申し込みなども舞い込み客足も伸び、毎日嬉しい悲鳴をあげている。
 まさに悲鳴なのだ。

『あああ!なんてこと……!"THE December"が……うちの店に……ひいいい!
 大森さんのあの……美しいシャウトを聞けるなんてえええ』

 Decemberは、一見退廃的な雰囲気を醸し出す、デビュー以来揺るがない独自の音楽を貫いているキャリアのあるバンド。
 ペコはボーカルの大森の大ファンだ。
 こうなると、仕事にならない。
 おまけに、里沙がインストアの翌日から寝込んでしまった。
 里沙のフォローがない中、千波は必死に店の仕事をするしかない。
 おかげで大分、全体の仕事に慣れてきたようだが。
 今日のライブは千波と里沙が招待されていたのだが、そういう訳で千波だけが来た。
 OVEREARTHのライブには里沙と一緒に行ったけれど、一人で他のミュージシャンのライブに来たのは初めてでドキドキする。嫌な感じはない。嬉しい気持ちのほうのドキドキだ。

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