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情画
第8章 別れ
ピンポーン…

「どうぞ。」

玄関を開ける。

ひゃっ…あ…

玄関の上がり口に大きな犬がいた。

よく見ると陶器の置物だったが、その犬がワタシの首輪をしているのだ。

ああ…びっくりした…

そして玄関に着替えの籠がない。

「いずみ、用意してある着物に着替えてアトリエに来てください。」

先生の声だけが聞こえた。

今日は沙絵さんの言う通りにしなくていいのだろうか。

衣装部屋に入ると、黒い着物が、喪服が掛けられていた。

何が起きたのだろう。不安になり急いで着付けてアトリエに向かった。

「先生…」

「そこにかけてください。」

先生は絵の道具を用意して、向かい合うように置かれた椅子に座るように勧める。

「先生…沙絵さんは?」

「もういないよ。」

「いないって…まさか…」

喪服の理由は…まさか沙絵さんが…

「いや、生きているよ。
これが沙絵の最後の命令なんだ。

詳しくは今は話せない。絵を描き終えたら話す。

まずは、今の心境のまま、絵を描くことになっている。

テーマが決められているんだ。

レクイエム(鎮魂歌)だ。」

魂を鎮める、亡くなった人に捧げる歌…
沙絵さんはどうしてしまったのだろう。
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