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情画
第8章 別れ
またしても涙が溢れそうだったけど、何だか沙絵さんに怒られそうで我慢した。

「すぐるさん…」


「はぁ…沙絵のやつ…
僕の一番の楽しみを奪ってしまうなんて…」

先生が肩を落とす。

「一番の楽しみって?」

「いや、叶わないからもういいです。」

「教えてください。先生。」

「あぁ…貴女を散々乱れさせてイク寸前に名前を教えて、呼ばせようと思ってたのに…」

先生は怒りからか照れからか真っ赤になって言う。

「すぐるさん…」

ワタシは先生の胸に飛び込んだ。

先生は驚きながらもワタシを抱き締めてくれる。

「いずみ、本名はすぐるなんだけど、その名前が嫌いでね。
小さいころから沙織や沙絵にも『ゆう』と呼ばせてたんだ。

優しいと書いて人に憂いと書いて、何で優れているんだろう。

両親が僕に人の上に立てる優れた人間になるよう名付けられたんだ。

どうしてもそれが嫌でね。
字を習うとき優しい、『ゆう』と読むと知ってから、ずっと自分の名前は『ゆう』だと思ってるんだよ。」

ああ、確かに、八年前の沙絵さんは『…う君』と呼んでいた。
優ると優しい、確かに意味の違いすぎる言葉、人が憂いという作りとも合わないのに何故同じ字が当てられているのだろう。
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