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星と僕たちのあいだに
第9章 涙のゆくえ
 

海風が、うつぶせでソファに眠る直樹の髪を散らした。
小さな手には昼間麻衣にもらった灰色のシュシュが、帰ってから片時も離さず握られている。

直樹のタオルケットを整えてダイニングの椅子に座り、滝沢は二年間やめていた煙草に火をつけた。
一服吸いこんで、ああ、吸ってしまったなぁ、と後悔したが、長らく吸う気にもならなかった煙草をのんでみようかという心持ちに応じるのは、そう悪いものでもなかった。

軽く吐いた煙が天井へ昇るのをぼんやり眺め、篠原麻衣にひどく心を惹かれていることを自分の中に確かめた。
なりふりかまわず追い回したくなっている自分をたしなめるのに苦労している。
三十五にもなって、こんな気持ちは実に厄介だと思った。

管理事務所で折りたたみ椅子に腰かけ、柿色の西日を受けていた若い女性は、留美子とそっくり同じ姿で息子を抱いていた。
世の中にはよく似た他人が三人いるといわれているが、はにかんだ笑みも、ふっくらした頬も、留美子そのものだった。
篠原麻衣が偲(しの)ばせる留美子の面影に、かつてない神秘性を感じ、狼狽してしまった。

現れては消える幻に追いすがるような気持ちを、はたしてこのまま放っておくべきなのか、迷いに迷った末、思い切ってペンをとった。
簡単な礼状をしたためるのに、直樹を寝かしつけてから朝方までかかった。
破りすてた便箋の山に我ながら苦笑した。
まさかの一目惚れだということに気づいたのは、手紙を書き終えてからだった。


 
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