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星と僕たちのあいだに
第10章 揺らぐ鬼火
話しながら早苗は、心の中で己の性格を恨んだ。
自分は麻衣のように人前で泣いたり、かわいらしく振る舞ったりといったことができない性格だ。
周囲はそんな自分を強情な女だと思っている。
そう思わせている自分がいけないのだけれど、あたしだって本当は誰かに本心を気づいてもらって、よしよしと頭をなでられたかった。
もっとすねたり、いじけたりすれば良かったのだ。
――――(あぁ、あたしはずっとひがんでたんだな……)
さまざまな思い出を話すうち、早苗はもっとも素朴な自分の気持ちに行き当たった。
話し終えた早苗の自嘲気味の微笑みが、打ちあけられた話以上に、思い通りにいかぬ恋路をわかりやすく教えていた。
きらめくロマンスで彩られていると思われた美貌の女ゆえ、早苗がいっそう苦しげに見える。
佐和は理解を示してやりたくなった。
『皆、白石君が好きよ。
私も彼が好き。
私のはどちらかというと
肉親的なものだけど。
一年も待たされて、
抱かれそこねて、海外転勤なんて、
並木さんとしては心残りしかないわね』
女性として同情する佐和に、早苗は弱々しくうつむいた。
『そうなんです。
自分はどうしたいのかって、
そればっかり悩んでる間に時間切れです。
ホントに好きになっちゃって……。
そうなると、言えないものですね。
好きって……。
うぬぼれかも知れないけど、
私、彼から愛されてると思ってます。
でも確証が得られなくて、
確かめるのも怖くて……』
誰にも話さなかった本心を初めて人に話した早苗は、少しはすっきりしたような気になったが、負けた試合の反省会のように、いまさら何を言っても現実に埒(らち)はあかないのだと虚しくなった。