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星と僕たちのあいだに
第10章 揺らぐ鬼火
 
人にはさまざまな事情があるから、簡単に他人を推し量ることはできない。
だから、想像もつかないような事件であっても、真相が明るみになっていく過程で、時には幾らか同情できることもある。

だが、この母親にいたっては、いったいどんな言い訳ができるというのか。
幼い子供に想像も絶する苦痛を与えたこの母親が、犯した罪を償う方法は地球上のどこにもない。
それほどの罪を犯したのにもかかわらず、悪びれることなく平然と警察車輌に乗りこむこの女は、人の形をした悪魔なのではないかと、画面に映る母親を見て麻衣は本気でそう思った。

亡くなった女の子は、直樹と同じ背格好で年齢も近い。
直樹と出会ってから子供にまつわる出来事にいささか過敏になっている麻衣には、とても他人事の視線で見れるものではなかった。

滝沢父子と公園で一緒に遊んだ日の幸福感は、麻衣の心のうちに輝きを失っていない。
その輝きは、直樹の母の不在という事実を知らされて以降、いっそうまぶしく麻衣の心に照りつけるようになった。

父親を困らせるほど駄々をこねて麻衣に逢いたがり、麻衣からもらったシュシュをまるで麻衣の分身であるかのように片時も離そうとしない直樹の思いが、早くに母を喪った麻衣には痛いほどわかる。

自分が母を喪った歳より、直樹はまださらに幼い。
肉親を喪うことによって味わわねばならない、数多くの恐怖や不安や苦しさというものの真っ只中に、直樹は、五歳そこそこの小さな体と未熟な心をさらしているのである。
本当なら人生で最も可愛がられなければいけない時期なのだ。

墓苑で偶然滝沢と出会い、滝沢家の事情を知ってからの麻衣は、直樹がどうしているのか、きちんと食事を摂れているのかと、ついつい気にしてしまうことが多くなった。
夕方薄暗くなると、父親の迎えを保育所で待っている直樹の姿が心に浮かび、教室の片隅で心細くしているのではないだろうか、引っ込み思案だから周囲の子供にいじめられてはいないだろうかなどと案じてしまう。


 
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