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星と僕たちのあいだに
第10章 揺らぐ鬼火
食事の準備ができたと、滝沢の呼ぶ声が聴こえた。
洗面所で直樹の手を洗ってやり、直樹を抱っこしてダイニングへ行くと、薄青色の涼しげなガラスボウルに氷水でひたした素麺がテーブルの中央に置いてあり、それぞれに薬味が用意されてあった。
麻衣がこしらえた具材を器に盛りつけながら滝沢が微笑む。
『篠原さん料理上手なんですね。
少しつまみ食いしたら、
止まらなくなりましたよ。
ごはんも炊いてありますから、
遠慮なく言ってください。
飲み物はどうなさいます?』
滝沢と同じものがいいだろうと思い、麻衣がそのように言うと、
『じゃぁ、せっかくご馳走なんで、
ビールにしましょうか』
と滝沢は冷蔵庫を開けた。
麻衣がベランダに振り向くと、大きな夕日が水平線のかなたに融け落ちようとしていた。
見たこともない、ものすごく大きな夕日だなと、麻衣は思った。
チャイルドチェアに直樹を座らせて麻衣も席に着き、三人で手を合わせた。
滝沢とビアグラスを鳴らし、ビールを口した麻衣は、液体が喉を落ちていく爽快感で喉が渇いていたことにあらためて気づいた。
渇きがいえていくことに感動すらおぼえる。
『おいしいっ』
麻衣はビールを、滝沢はソテーした茄子のことを同時に言った。